2016年11月10日木曜日

やっと。

岐阜城でお馴染み金華山にこもって早2ヶ月、最初はそっけなかった小動物や大動物たちも今ではお裾分けをする仲に。

そろそろ冬ごもりに備え、頬にドングリを蓄え始めたある日、彼らはやって来た。

一人はドイツ人離れをした美男子、そしてもう一人はミカンとサンドイッチが入ったビニール袋を決して離さない大男子。

簡単にいうと昇々・鯉八だ。

膝が震えている彼は「やっぱりロープウェイにすれば良かった」とぶつぶつ。
防水加工の帽子の彼は「僕は山が好きなんだ」とつぶつぶ。

そう、鯉八・昇々だ。

僕はとっさに熊の陰に身を隠す。

鹿が洗って干してくれていた僕のA太郎似顔絵入りパーカーを発見した彼らが、「A太郎~」と叫ぶ。

リスが「君、二時間も呼ばれてるぜ。うるさくて迷惑だから行ってやんな」と僕の脛にドングリを投げつける。

しぶしぶ熊の股ぐらをくぐり、彼らに向かって「やあ、やあ、やあ」と。

すると、どこで手に入れたのだろうか、美男子が伸縮自在のさすまたを取り出し僕に押し付ける。

そして、その勢いで倒れた僕に大男子が馬乗りになり、「兄さんミカン食べる?」と。

無事保護された僕を、彼らは完璧な組体操で見送ってくれた。
ここでいう彼らとは、小動物や大動物のことだ。
入れ替わりに昇々・鯉八が山に残ったわけではないのである。

山を降り「どうせ岐阜には温泉なんてないんでしょ」という二人と、長良川近くの温泉へ。

冬ごもりの為に生やしていた体毛を全て剃り、温泉に浸かり三人で鵜飼いの鵜について話し合う。

近くで聞いていた鵜が照れ出したので、話を切り上げ温泉を出る。

そして「どうせ岐阜には喫茶店なんてないんでしょ」という二人を兄の喫茶店へ連れて行く。
二人にサインを求める兄。
ちなみに僕は兄に頼まれたことがない。

三人で白川郷について話し合う。
遠くで聞いていた白川郷に雪がちらついてきたので、話を切り上げ店を出る。

さらに「どうせ岐阜には食べ物なんてないんでしょ」という二人を連れて実家へ。

着いたとたん「どうせ岐阜には、焼き肉とか鍋料理とか秋刀魚の塩焼きなんてないんでしょ」という大男子に、母が焼き肉と鍋料理と秋刀魚の塩焼きを献上する。

ビール一口で酔っ払った美男子と、おにぎりをリクエストする大男子が、父とやたら盛り上っている。

父が「やっぱり落語家は面白いね~」とご満悦だ。
落語家の僕は、父のその台詞を聞いたことがない。
そっとその場を去り、ロク亡き後の新犬ハルとじゃれあう。

宴もたけなわ、最後に八が父に「お父さん、明日一緒に温泉行きましょうよ」と。
すると、父は八に「それとこれとは別だ」
と断る。

この距離感は血だな、と。

そして気付く。
僕は周りに助けられて生きている。