あまりに急遽だったため、楽屋に置いてあった鯉八くんの着物を借りる。
普段と違う着物を着ると、新鮮な気持ちだ。
さらに、いつもは袴をはくのだが、この日は、袴をはかずに羽織を着る。
羽織を着るのは、二ツ目昇進の披露目以来初めてだ。
羽織というのは脱ぐタイミングが難しい。
特に決まってはないのだが、普通は、まくらから噺に入るときや、噺の中で、必要な場面が来たら脱ぐ。
しかし、羽織に慣れてない僕は、不安を抱えたまま高座へ。
まくらから噺に入るときに脱げず。
噺の途中でも脱げず。
別に脱がなくてもいいのだが、悔しいので落ちの前に羽織りを脱ぎ、一呼吸おいて落ちを言った。
あの一呼吸で何かをつかんだ気がした。
落ちの前で羽織を脱いではいけないということを。
雨の中、意外に多く来て頂いたお客様、
ありがとうございました。