A太郎ツイッターです。
彼はそう言った。
彼が言う5時とはもちろん朝だ。
人二倍時間に厳しい春雨や雷太のことだ。
遅刻は許されまい。
一睡も出来ないままタクシーに乗り込み、彼のマンションのある静岡の富士見台へ。
『子供の頃、富士山を富士っていう人だと思ってたんだよね。日本一の富士さん、憧れたね』
彼の迷言を思い出す。
あの時プッと笑ってしまった僕に『笑いたい奴は笑え』
そう言った彼の目には薄っすらと涙が浮かんでいた。
富士山が見えて来た。
僕は念のためカバンに入れていた防弾チョッキを身に付ける。
『32500円です』と振り返ったタクシーの運転手の額を撃ち抜き、402のベルを鳴らす。
返事がない。
ただ気配はある。
いや、あり過ぎる。
だって嵐のA.RA.SHIが中から聞こえてくるんだもん。
ファンの僕は思わず口ずさむ。
いやいや、こんなことをしてる場合じゃない。
二時間、105曲、2,700ベル。
『遅かったね』
何事も無かったように彼は扉を開けた。
手にはうちわを持っている。
真っ暗な部屋にちゃぶ台が一つ。
『手作りなんだ』
『そうなんですか』
『ひっくり返す為に作ったんだよ』
『え?』
『わかる?』
『なにがですか?』
『わからないかな』
『わからないです』
『君は愚鈍だな』
『すいません、教えて下さい』
『つまり、物を作るってことは壊すってことなんだよ。君が僕に聞きたかったことは、それだろ』
『師匠!』
僕はちゃぶ台をひっくり返す。
『そういうことさ』
彼は笑っていた。
それから彼と僕の奇妙な同棲生活が始まった。