2015年6月15日月曜日

雷太郎ツイッター

A太郎ツイッターです。


「5時にウチ来いよ」


彼はそう言った。


彼が言う5時とはもちろん朝だ。


人二倍時間に厳しい春雨や雷太のことだ。

遅刻は許されまい。


一睡も出来ないままタクシーに乗り込み、彼のマンションのある静岡の富士見台へ。


『子供の頃、富士山を富士っていう人だと思ってたんだよね。日本一の富士さん、憧れたね』


彼の迷言を思い出す。


あの時プッと笑ってしまった僕に『笑いたい奴は笑え』

そう言った彼の目には薄っすらと涙が浮かんでいた。


富士山が見えて来た。

僕は念のためカバンに入れていた防弾チョッキを身に付ける。


『32500円です』と振り返ったタクシーの運転手の額を撃ち抜き、402のベルを鳴らす。


返事がない。

ただ気配はある。

いや、あり過ぎる。


だって嵐のA.RA.SHIが中から聞こえてくるんだもん。


ファンの僕は思わず口ずさむ。


いやいや、こんなことをしてる場合じゃない。


二時間、105曲、2,700ベル。


『遅かったね』


何事も無かったように彼は扉を開けた。

手にはうちわを持っている。


真っ暗な部屋にちゃぶ台が一つ。


『手作りなんだ』

『そうなんですか』

『ひっくり返す為に作ったんだよ』

『え?』

『わかる?』

『なにがですか?』

『わからないかな』

『わからないです』

『君は愚鈍だな』

『すいません、教えて下さい』

『つまり、物を作るってことは壊すってことなんだよ。君が僕に聞きたかったことは、それだろ』


『師匠!』


僕はちゃぶ台をひっくり返す。


『そういうことさ』


彼は笑っていた。


それから彼と僕の奇妙な同棲生活が始まった。