トイレが男女共通の桃園会館で、着物で小をしている後ろ姿を、お客様の女性二名に目撃されたのは、私A太郎です。
さてさて、先日のシブラク創作大賞において、創作大賞の粋歌姉さん・シブラク大賞の昇々くん・三四郎兄さん・吉笑さん・笑福亭の羽光さん・三木男兄さん・志ら乃師匠・サンキュータツオさん、そして男気彦いち師匠と、華やかなメンバーが揃った舞台上で昇々くんに後ろから抱きつき批判を受けた私A太郎。
そのまばゆい会の三時間前、仄暗い居酒屋で薄ら笑いを繰り返すメンバー達が集う、物寂しい飲み会があったことを、皆さんはご存知だろうか?
もちろん知らなくて良い。
柳家蝠よし(番頭)
柳亭明楽(若頭)
桂伸力(無言の圧力)
そしてA太郎(奇妙)
このメンバーが揃うことこそ奇跡。
無駄な奇跡。
『成金』のタイトルのみの生みの親である私は、この会を『不成金』と名付ける。
まさかこの四人が後の落語界を変えようとは。
はっ?
この会の決まり事をご紹介しよう。
①なるべく他人の悪口を言わない(蝠よし以外)
②なるたけ小さな声で話す(蝠よし以外)
③ことさらに自慢話をしない(蝠よし以外)
④出来るだけ失敗談を持ち寄る(蝠よし以外)
⑤集まるのは春・夏・秋・冬の年四回(蝠よし以外)
⑥二時間で切り上げる(伸力以外)
⑦交換用のプレゼントは千円以内(明楽以外)
集まるとまず全員無言。
店で一番安い焼酎のボトルを水割りセットで注文。
三十分の沈黙に耐えられず、A太郎が「皆さん最近どう?」と。
徐々に打ち解けていく。
一時間後に伸力がこの日初めて口を開く。
そして一時間半後に蝠よしが自慢話を始めたところで、お待ちかねのプレゼント交換タイムへ。
今回はクリスマスも兼ねる。
A太郎は、インディアンの羽根付きキーホルダーを。
明楽は、卓上加湿器。
蝠よしは、くじら屋の缶詰め(たけしフリーク)。
伸力は、スターウォーズのボールペン(彼はスターウォーズを観たことがない)
ここからは明楽の独壇場だ。
彼の「始め!」の声でプレゼントが回る。
今まで聞いたことがない清んだ声だ。
回るプレゼント。
何回転かののち、「斜め!」の明楽声で、四人席の対角線に座ってる人とプレゼントを交換。
再び回るプレゼント。
「あと十回!」
全員でカウントダウン。
「やめ!」
僕の手元には、スターウォーズのボールペンが。
伸力は、インディアンキーホルダーを手に今日初めての笑顔を見せる。
明楽は缶詰め。
蝠よしは加湿器。
うなずく四人。
蝠よしが、明楽に渡った缶詰めを開けようとした所で皆席をたつ。
また春にね。
その後、シブラクの楽屋に入った私は、そのまばゆさに目が眩むこととなる。