楽屋に戻り、着替える。
蓮二さんのお弟子さんに、「100円ショップのメガネと、引き出物のメガネどっちが良いと思いますか」と聞くと、100円の方が似合う、と。
案外そんなもんだ。
父の知り合いが楽屋に来る。
僕に向かって「A太郎さんいらっしゃいますか?」と。
「まだ来てません」と言って帰って頂く。
開演30分前、鶴瓶師匠が到着。
今度は本当に楽屋がピリッとする。
「おう、A太郎」
子供の頃からテレビで見ていた人から名前を言ってもらえるなんて、未だに信じられない。
そして何度お会いしても緊張する。
前座さんたちが師匠に群がり挨拶。
みんな、今日の目的は果たせた、という顔をしている。
突然京都から来た従兄弟が、楽屋に入って来て、師匠と蓮二さんとあこさんに、京都の有名な何かを渡し始める。
そしてまた従兄弟にはなし。
さらに何と鶴瓶師匠とツーショット写真を撮ってもらっている。
うらやましい。
どうにも我慢出来なくなり、師匠にA太郎クリアファイルを手渡す。
「なんやねんこれ」
確かに『なんやねんこれ』だ。
沼袋と鶴瓶師匠が繋がったことに感動していると、中野のおばさま達から『A太郎をよろしく』と師匠に、ケンタッキーの差し入れが届く。
一瞬楽屋に『高座前にフライドチキンって』という空気が漂う。
すかさず師匠が「みんなで分けようや」と。
安堵の笑みがこぼれる。
高座終わりにみんなで分けて頂きました。
ありがとうございます。
受付の方から「iPhoneケース売り切れました」と連絡が。
もう少し値段上げても良かったかな。
「まもなく開演です」
暗い階段を下りて行く。
反対側の袖には蓮二さんがカメラを構えている。