2013年7月28日日曜日

山の神

バケツをひっくり返したような雨とは、バケツ何杯分なんでしょうか。
一杯なら大したことないですね。
それとも大きなバケツなんでしょうか。
でも、大きすぎたらもうバケツとは呼べないですね。

さて、昨日から草津温泉らくご。
今回は、酔っ払ったお客さんが騒ぎ出し、他のお客さんと大喧嘩になった。
仕方ないので何とか止めようと、
「僕を取り合って喧嘩しないで下さい」と言うと、
二人とも笑い出した。

笑いは世界を救いますね。

翌日、日頃の疲れを取るために、朝五時に起きて、『天狗裁き』という落語の稽古のため、草津天狗山に登る。
天狗像に登山客が手を合わしている。
そりゃ、天狗の鼻も伸びますよ。

続いて白根山を目指す。

早速、山道でこけて足を痛める。

自然は大きなホスピタルだ。

足を引きずって脇の道路を歩いていると、車が止まり
「乗って行くか」
と言って頂いた。
後部座席を見るとビニールシートがモゴモゴ動いていたので、丁寧にお断りする。

山は厳しい。

山小屋のリンゴジュースが270円なのも厳しい。
飲み終わってから『よく振ってお飲み下さい』に気付くのも厳しい。

ただ山小屋のトイレがウォシュレットだったのはお尻に優しい。

山小屋のおばあちゃんに
「山を歩くということは、自然を踏み潰すということだ」と戒められる。
ただ「踏まれれば踏まれるほど強くなる、歩きなさい」と言われる。

山道に入るとやたら蠅がたかってくる。「俺は羽光と同類か」と聞くと、
蠅が「いや違う」と答える。
安心していると「死に近いのだ」と言われる。

側道を歩いていると、車に乗っていた子供に「あの人お金がないから車買えないんだね」と言われる。

そうだよ、だから歩いて行くんだよ。

ようやく白根山頂上へ。
ネタ作りのためとはいえ四時間は大変だった。

旅館のおばあちゃんに握ってもらったおにぎりを、原っぱに寝そべって食べる。

おいしい。

頂上近辺の湯釜で、草津のマスコットキャラクター湯もみちゃんに遭遇する。
投げキッスをしてもらった。

中身が羽光さんみたいな人でないことを山の神に祈る。

下山途中クマに遭遇する。
蠅の予言か。

だめもとで冷静に「お前の勝つ可能性は百%じゃないだろ、万が一負けたら恥をかくぞ」と言うと
「いや百%だ」とクマが答える。
「俺が銃を持ってたらどうする」
「日本では銃は禁止されている」
「俺は猟師だ」
「いやお前は落語家だ」
「俺のラグビータックルで馬乗りになったら五分だぞ」
「馬乗り?」
と考えてる間に逃げてきた。

後ろから「俺はクマだからクマ乗りだ」と聞こえてきた。

つまらない。

冷や汗をかいていたら、次はカモシカに遭遇する。
「俺は、はじめの一歩を読んでるから、お前のジャンプ力は知ってるぞ」
と言うと、
「それがどうした」と言われ頭の上を飛び越えて行った。

自然は小さな動物園だ。

蠅、クマ、カモシカとの会話はどうあれ、遭遇したのは本当です。

信じてみて下さい。

下山途中側道に出ると、再び車が止まり
「足大丈夫ですか?乗って行きますか?」と言って頂く。
後ろにビニールシートもないので、ありがたく乗せてもらう。
お礼に落語を一席『面会』を後部座席で語る。

なぜか途中で「降りてくれ」と怒鳴られ、再び歩き出す。

しばらく歩いていると、ツーリング中のバイクが止まり、ワイルドなおじさんが
「おい、乗れ、東京まで連れてってやる」と。
断れそうにないので、後ろに乗せてもらう。

この際、宿の荷物はまた今度草津に来たときにしよう。

今サービスエリアで、なぜか宝くじを買って頂きました。

無事に帰れることと、宝くじが当たることを、陸の神に祈ります。