風邪を引いたので、治すために年に一回通っている占い師のところへ。
しかし、その店がなくなっていた。
仕方ないので、近くの占いの店に行き『あの占い師がどこに行ったのか』を占ってもらう。
『南東に行けば会える』と言われたので、二駅先で降りてみると、なんとあの占い師の店があった。
入ろううかと思ったが、教えてくれた占い師の方が当たりそうだと思い、引き返す。
そういえば占いといえば、つい新聞で今日の運勢を見てしまうが『今日一日良いことがない。動くべからず』などと書かれていると、ビクッとしてオロオロしてしまう。
せめて次の日の運勢も載せて『今日は悪いが明日は良くなる』などとなっていれば、今日一日は耐えようと思えるのだが。
風邪を治すために、浅草演芸ホールの出番前、近くの公園で稽古する。
浅草には変わった人が多く、その日もハトに餌をあげ、そのハトが餌を食べようと近づいてきた瞬間、持っていた傘を振り回す、という優しいのだか優しくないのだかよく分からないオジサンがいた。
それを見てニヤニヤ笑っていた僕に、オジサンが走り寄ってきて、長々と苦しい現状を語る。
そして最後に、なぜか僕に小咄を教えてくれた。
『関空とかけて味噌汁ととく。そのこころは、どちらも湾(椀)に浮いている』
『イチローとかけて、桜ととく。そのこころは、どちらも最多安打(咲いたぁんだ)』
お腹をグウグウ鳴らしながらの熱演だったので、仕方なくネタ代というていで、なけなしの千円を渡す。
お互い様だ。
早速オジサンに教わったネタを、その日の高座でやったら見事にすべった。
千円を取り返しに行ったのは、言うまでもない。